子供が大きくなるまでは出来る限り子供と一緒にいたいと思うのは自然なことです。そうして出産に合わせて会社を辞め、以来十年以上主婦として生活してきた元薬剤師が、子供が大きくなり受験を控えるようになって子供の学費を稼ぐために薬剤師として復帰すると言うケースは少なくありません。しかし、ブランクが長いと、いきなり復帰してもきちんと仕事ができるか不安になることでしょう。転職前に独学で勉強して必要な知識を取り戻すにも限界がありますし、実際に働き始めてから調剤ミスなどあった日には目もあてられません。そんな時でも、職場をきちんと選びさえすればブランクを気にせず働くことができるようになります。
ブランクが長い薬剤師にオススメなのが門前薬局です。通常の頓服薬から点滴薬、注射薬まで幅広い薬剤の知識が必要な病院薬剤師なんてもっての外ですし、次々に新しい種類が出てくるOTC医薬品を扱うドラッグストアなども難しいでしょう。しかし、門前薬局となると話は別です。門前薬局は特定の病院の側に置かれ、その病院から訪れる患者さんの処方箋をメインに扱います。病院にもよりますが、耳鼻科や内科など特定の科目を中心に扱う病院であれば、訪れる患者さんの症状が似通っており、処方される薬の種類も似たようなものになります。また、ある程度使われる薬の種類が絞りこまれているため、コンピューターで飲み合わせのチェックや用法用量の確認が行えるようになっているところも多いです。つまり、薬剤師のミスを極力減らせるような環境が整っているので、ブランクのある薬剤師が働く場所としても最適だと言えます。
門前薬局ではたらくメリットはそれだけではありません。いくら機械がサポートしてくれるとは言っても、薬剤師が医薬品について詳しくなくても良いわけがないです。当然、その薬局で扱っている医薬品について勉強しなければなりませんし、もし現役時代の知識が抜け落ちていれば、思い出すのもの一苦労です。
そんなブランクのあるママ薬剤師にとってありがたいのが、門前薬局では頻繁に扱う医薬品の種類がある程度絞られているため、それらの医薬品について集中的に勉強するだけで済むことです。また、先輩薬剤師がその医薬品についてプロフェッショナル化しているため、困った時には先輩薬剤師に聞けば良いので何かあっても心配はいりません。覚えなければいけない薬の種類が少なければ自ずと勉強も楽になりますし、先輩薬剤師の方々は同じ薬を長い間扱っていますので、副作用や飲み合わせについて知識もかなりのものでしょう。扱っている薬について、自分で勉強しつつ先輩方に一つ一つヒアリングしながら勉強していけば、ブランクを埋めて以前のように薬剤師としてバリバリ働ける日も近いです。
ただし、門前薬局なら扱う薬が絞られるというのは、何の病院の門前薬局かによります。全ての門前薬局が、必ずしもブランクのある薬剤師に向いているというわけではありません。例えば、内科や小児科では液剤などの調剤が増え、冬場の繁忙期には限られた時間の中で多数の処方を捌かなければならないため、久しぶりに薬剤師として働くママ薬剤師には少々大変な職場になるかもしれません。一方、眼科や整形外科の門前薬局であれば別です。扱う薬剤は既にパッケージ化されている点眼液や外用薬が中心なので業務的には簡単ですし、時期によって極端に多忙になることもないでしょう。待遇的にも他の薬局と大きな差が出るということもありません。
ブランク明けの数年は眼科などの比較的混雑が無く、扱う薬剤も簡単なものが多い門前薬局を選び、ある程度慣れてきたら他の薬局やドラッグストアに転職するというのも良いでしょうね。