ピラミッドの頂点に憧れを抱く人は少なくありません。
薬剤師の中にも、独立開業して自分の薬局を作るぞ！と張り切っている人もいるでしょう。
患者数の多い病院近くの調剤薬局に勤務していると、何もしなくても患者さんがひっきりなしにやってくるような感覚に陥ります。
自分で独立・開業したほうが儲かるんじゃないか？と考えても不思議ではありません。
しかし、経営者の立場は勤務薬剤師と比較して遥かに高いリスクを背負っていることを忘れないでください。
見切り発車で開業しても成功する可能性はそう高くはないのです。

調剤薬局を開業する上で最も重いリスクは、売り上げが上がらないことでしょう。
場所の選定を間違えたり、開業後の運営資金の概算および確保を怠ったりした場合、経営状態の安定を迎えることなく倒産する可能性もあります。
開業して収入が増えるのは、売り上げが上がって経営状態が安定すればの話であることを念頭に置くべきなのです。

また、調剤薬局は病院から出された処方箋をもとに患者さんに薬を処方します。
ということは、ほとんどの患者さんは調剤薬局に来る前に、その近辺の病院を訪れます。
つまり、自身の調剤薬局に何の問題がなかったとしても、門前病院の経営不振や移転、廃業などがダイレクトに調剤薬局の経営状態にかかわってくるということです。

さらに、薬を取り扱う商売ですから、調剤ミスによる過失は計り知れません。
従業員が誤った調剤を行ったり、異物を混入したり、危険な薬を持ち出すリスクもあります。
どのような企業にしても過失により失われる信用は大きなものですが、人の命を扱う調剤薬局においてこのような信用の失墜は致命的といえるでしょう。

そのほかにも、店舗で働く薬剤師の確保ができないリスク、社会保険制度が改変されるリスク、競合店舗が近隣に新設されるリスクなど、リスクとして考慮しなければならないことは非常にたくさんあります。

調剤薬局の中にはフランチャイズ店舗も存在します。
自分で初めから独立・開業するのは不安だけれど、フランチャイズならやってみようかな？という人も多いことでしょう。
確かに、フランチャイズ店舗なら経営のノウハウを教えてくれますし、見知った看板を掲げられるため、まっさらな状態から開業するよりは幾分安定した収入が見込めるでしょう。
しかし、フランチャイズといえども自分で開業することに変わりはありません。
経営者としてのリスクは上記したものと何ら変わるものではないのです。
また、フランチャイズ元に支払うロイヤリティもあるため、収入が劇的に増えることは考えにくいです。

調剤薬局で勤務する薬剤師の場合、収入面に関しては独立しなくとも十分高額なはずです。
「開業してこんな薬局を作るんだ！」という強い覚悟でもない限り、独立・開業はおすすめできません。
失敗するリスクを背負うよりも、正社員やアルバイトとして頑張って出世したほうが堅実と言えるでしょう。