2015.1.22(thu)
前回のつづき
さて、前置きが長くなってしまいましたが、いよいよ本題です。
まず、2015年の通常国会で提出予定の日本版ホワイトカラー・エグゼンプション(高度プロフェッショナル労働制)は
以上の2点の条件両方に該当する労働者で適用をするには本人の同意が必要となっています。
そして、この制度の適用条件に導入企業は
上記の3択のいづれかを選択する事になっています。
ハッキリ言って、『自分には関係ない』と思っている人が多いと思います。
私も今の会社で経営側(管理者)ではなく、労働者の立場で年収1075万円以上になれるとは思っていません(あっ!!会社批判では無いですょ。このブログを社長が見ない事を祈ります…)
労働者の立場のまま年収1075万円になれる人は、ごくごく限られていると思います。また、それだけの能力がある人であればこそ、会社が制度の適用を求めてきても、会社に対して堂々と『嫌だ』と言う事も可能だと思います。
その為、労働基準法は労働者の『労働』を『時間』で管理する概念で作られており、長らく企業側は労働の評価を『時間』でして、賃金として支払ってきました。
工場で働いている人が多かった時は、働いている時間が長ければ、それだけ製品を作る事ができ、企業も製品を売れば儲かる構図でした。
しかし、現在の日本の労働者はいわゆる『ホワイトカラー』と呼ばれる労働者の方が多くなっています。能力が高く時間内に全ての仕事をこなす人よりもダラダラと仕事をしている人や能力が足りなくて仕事を時間内にこなせない人の方が残業代を貰い給与が高いという逆転現象も有り得るのです。(勿論、能力が高くても仕事量が多すぎる為に残業している人が一番多いと思いますが)
更に、日本古来の悪しき慣習だと私は思うのですが、『時間内に与えられた仕事を全てこなし、残業をしないで帰る人』よりも『残業を多くしている人』の方が頑張っていると評価される風潮が残っているのも事実です。
そこで『時間』ではなく『成果』で報酬を支払おうというのがこの制度です。
政府の大義名分としては、この制度を導入する事により労働者が自分で労働時間を管理する事が出来るのでライフワークバランスの向上につながると言っています。
私は、この制度の導入に関しては賛成です。しかし、導入にあたり『労働者』を守るべき制度が不十分に感じます。例えば前述の導入企業に対する導入条件ですが、『インターバル制度』か『労働時間の上限規制』のどちらかの選択であれば良いのですが、『年間休日104日』は殆どの企業が該当します。
たしかに休日出勤をする事によって104日を割る事も考えられますが、企業側がしっかりと『労働』の実情を管理出来るのか?更には、ブラックな会社であれば『休日出勤』を無かった事にする事すら有り得ると思います。
何故、ついさっき『自分には関係ない』と言っていた私が、年収1075万円以上の労働者の制度の導入をこんなにも心配をしているのか?
皆さん、消費税導入の時の事を覚えていますか?
消費税は初め3%で導入されました。段階的に引き上げられ8%となり、今後10%となる事もほぼ決定的となっています。
今回の制度も同じ経過をたどっていく気がします。導入当初は年収1075万円であったとしても、『制度の使い勝手が悪い』という企業側の意見が通り、数年後に条件が引き下げられる事も充分考えられると思います。
実際に第一次安倍内閣がこの制度の導入を検討し始めた2005年当初、経団連が提言しているのは年収400万円以上の労働者です。
どうですか?『自分には関係がない』と本当に言っていられますか?
もう1つの導入条件である『高度な専門職』という条件も拡大されれば、多くの労働者が残業代ゼロになってしまう事でしょう。
以前もお話したように私はブラック企業に勤めていたので、会社側のブラックなやり口はある程度想像出来ます。(本当のブラック企業は元々、残業代なんて払ってないですが…)これほど悪用が簡単な制度は無いと思います。
もし、年収条件が引き下げられた場合、年収が400万円の労働者が会社に『NO』が言えるのか?どう考えても会社側の立場の方が強くなってしまうと思います。当初の目論みとは逆に、仕事量が増え、残業も増えて、ライフワークバランスどころではなくなる可能性だってあると思います。
私の様な営業職は、長時間働いたからと言って『成果』が上がる仕事ではありません。労働時間も自分である程度決めて働く事は可能です。しかし、『薬剤師』は薬局の開局時間が決められている以上、自分で労働時間を決める事なんて出来るわけがありません。
まして処方元のクリニックの診察時間が冬場の繁忙期は伸びてしまうなんて事は良くある事です。当然、残業をしなければいけなくなります。
本当に自分の裁量で労働時間を決められるならば、私の様な職種の労働者にとっては良い制度だと思います。しかし、拘束時間を余儀なくされる職種にまで条件が拡大されない事を願うばかりです。