なぜ、調剤薬局でOTCを置くのか?:薬剤師転職navi |
調剤薬局におけるOTC販売の意味とは?
調剤薬局と言えば、患者さんから処方箋を受け取って薬を調剤し、服薬指導をした上でお薬を患者さんに渡す。
いわゆる保険調剤というシステムで売り上げをあげています。
一方、ドラッグストアはOTCの販売をメインにやっていますが、最近は保険調剤も受け付けている店舗もかなり増えてきました。
そして、調剤薬局も保険調剤だけではなく、少し前からOTCも薬局内に配置して販売するところが増えており、トレンドとなって各地の薬局に波及していっています。
あなたの薬局もある日経営者から、「OTCも販売する事になったから、頑張って売るように。」
などと言われたかも知れません。
その時どう思いましたか?
「OTCはドラッグストアに行けば種類豊富にあるのだから、調剤薬局に置いてもあまり売れないでしょ。」
「調剤だけで忙しいのに、OTC売る余裕なんてない。」
みたいな事を考えなかったでしょうか。
では、この調剤薬局でもOTCを置いておくというトレンドは本当に必要なのでしょうか?
国策から見る調剤薬局でOTC販売とは?
調剤薬局にOTCを置くというトレンドは、そもそも何故始まったのでしょうか?
その大きな理由として、医療費の増大が挙げられます。
超高齢化社会にある日本では、医療費が年々膨れ上がっており、この流れはまだまだ止まる気配がありません。
医療費の大部分は税金から賄われていますから、国としても医療費の増大は痛手となっているのです。
無闇に増税という訳にもいかないので、医療費を抑えたい財務省はあるところに使われている費用をカットしていこうとします。
そのあるところというのが、調剤報酬です。
日本は医師の影響力が強く、また医師不足という事もあり、医師の診療報酬を引き下げる事は強くできません。
しかし、薬剤師に関係する調剤報酬の方はかなり強気に引き下げをしてきます。
平成26年度の調剤報酬改定を見てみましょう。
数字上は0.1%の引き上げみたいな風になっていますが、中身をよく見てみると調剤報酬の算定要件がかなり厳しくなっているので、結果的に収入がマイナスになってしまう薬局が多かったのではないかと思います。
医療費増大の流れがこのまま続くと、次回の改定もマイナス改定になったり、算定要件を厳しくしてきたりする事でしょう。
保険調剤だけで利益を上げることが難しくなってきているのです。
そこで、経営者が考えたのがOTCの販売です。
保険調剤以外の収入源を増やすことで、調剤報酬の引き下げで減ってしまった利益を補おうという訳です。
より儲けたいからOTCの販売を始めるのではなく、儲からないからOTCも販売するのです。
そういった事情があるので、経営者としてはOTCの販売も頑張って欲しいと思っています。
しかし、実際はそうも上手くいかないようです。
宮城県の保険事務所が調べた統計データがあります。
http://www.pref.miyagi.jp/uploaded/attachment/51940.pdf
これによると、調剤薬局に勤める薬剤師のうちかなりの数が薬局でのOTC販売にネガティブなイメージを持っているという事が分かります。
もともと調剤薬局は広くない事が多いので陳列スペースも余裕がないから、限られた薬品しか置いておくことができない。
ドラッグストアと違い、セールストークの勉強をしている訳ではないので売り込みができない。
そもそも保険調剤だけで忙しいのに、OTCにかまけている余裕がない。
色々な事情があるようです。
しかし、調剤薬局でのOTC販売には売り上げの問題だけでなく、もっと大きな意味もあると思います。
かかりつけ薬局ならではのサービス
現在、医療の流れは地域医療の強化・充足の方に向いています。
そこでかかりつけ薬局の存在が大きくなってきます。
また、医療費を抑えるためにセルフメディケーションの推進も行われています。
セルフメディケーションの要になるのがOTCですから、その適切な使用法を伝える・症状に合わせたOTCを販売するのが薬剤師の役目です。
かかりつけ薬局だからこそ、そういったセルフメディケーションについて伝えることができますし、OTCの相談販売が可能だと思います。
調査の中で販売価格が高いという項目がありますが、高くても売れるものは売れます。
ある薬剤師さんは、「一度相談販売して患者さんに満足してもらえれば、必ずリピーターとして相談に来る。」と仰っていました。
きっかけさえ掴む事ができれば、売れるものは売れるのです。
忙しいのに売り込みなんかしたくないという薬剤師さんは多いでしょう。
でも、無理に売り込む必要はないと思います。
服薬指導中の患者さんとの話の中で、さりげなく勧めたり、相談にのったりする中で売れるはずだからです。
上手く相談販売ができれば、薬剤師個人としても患者さんから頼りにされますし、かかりつけ薬局としての機能も果たす事ができるでしょう。
OTCを販売する事を最初から嫌がるのではなくて、このトレンドにどのように順応していけば良いのかという事を考えるべきでしょう。
薬剤師自身の意識改革が必要なのです。
そのためには、保険薬だけでなくOTCに関する知識がもちろん必要になってきます。
OTCの勉強会に参加したり、書籍で勉強したりして知識の充実を図りましょう。
あるいは、OTCの社員研修の充実している職場で働くのも良いかも知れません。
このトレンドにおいて行かれないよう、何かしら行動を始めてみましょう。