| 医療事務が、軟膏の混合はマズいでしょ…監査どうするの？：薬剤師転職navi |
アタマじゃ分かっているけど、無くならない実態
人それぞれに特性があるように疾患にも特性があるので、患者さん一人一人に処方される薬は違います。それは飲み薬だけでなく、塗り薬のような外用薬も同様ですよね。そこで、軟膏もチューブ1本処方して終わりという訳ではなく、異なる効能の軟膏をミックスする事の指示を書いて処方箋を医師が発行する場合も多くあるはずです。
特に皮膚科が門前の薬局では、軟膏の混合なんて日常茶飯事ではないでしょうか。他にも、小児科が門前の場合も、薬効を薄める為に薬効成分のある軟膏と白色ワセリンのようなものを混ぜて処方するというケースがよくあるようです。
しかし、この軟膏の混合ですが、簡単に出来るはずもなく、軟膏同士を均一に混ぜるためには時間をかけて混ぜないといけません。そして、混合している間に他の患者さんがやってきた…。気づけば待合室が大混雑ということになっている薬局さんもあるようです。
医療事務の手の空いている？
ただでさえ調剤・服薬指導と時間をかけなければいけない業務があるのに、軟膏の混合もやっていたらとても追いつかない。そんな時もあるのではないかと思います。特に冬場は軟膏も硬くてなかなか混ざらないということはよく起こりますよね。より時間がかかるので大変なことは想像に難くないです。そして困り果てた薬局が、手の空いている医療事務に軟膏の混合を任せてしまっているところも…。（目の前で見たわけではなく、あくまでも噂レベルで聞いた話ですので、ご了承ください。）
「混ぜるだけなら誰でも出来るから？」
それは大きな間違いです。
前述の通り、軟膏は均一に混合しなければ取った部分毎で薬効が大きく変わってしまいます。顔などの皮膚の薬剤吸収率が大きい部位によく混ざってない原薬を塗ってしまった場合、副作用を引き起こす原因にもなるかもしれません。特に、子どもの軟膏は顔に塗る指示も多いようなので、ステロイド剤だったりすると危険な場合もありますよね。
また、混ぜてしまえば何を混ぜたかわからないという事も考えられます。
軟膏のピッキングも医療事務がやっていたら、間違ってピッキングしてそのまま混ぜてしまう可能性もあるはずです。軟膏のチューブも形状がよく似ているものが多いですし、軟膏の名前も似たようなものも多いです。医療事務は素人なので、そういったミスを起こしやすいのです。また、ピッキングを薬剤師がしてから任せたとしても監査が不十分な場合があるかもしれません。
混合後に、混ぜた軟膏のチューブを薬剤師に見せているので大丈夫という方もいらっしゃいますが、医療事務が混合前のチェックをしていれば間違いも起きやすく、間違っていた場合の薬剤の損失が考えられます。それに、もし間違った軟膏を患者さんに交付して健康被害を起こしてしまった場合、どうなるのでしょうか。
責任を問われるのは医療事務だけではない
この場合、軟膏を混合した医療事務が悪いだけではもちろん済みません。そういった状態を放置していた薬局経営者、現場の指揮をとっていた管理薬剤師がまず罰せられてしまいます。また、管理薬剤師不在の日も同様に医療事務の軟膏混合が行われていた場合、一般薬剤師にもその罰が波及する恐れも考えられます。忙しいからといって、医療事務に任せてしまうのは大変なリスクがあるのです。
ちなみに認識を正しく持っている薬剤師さんは、勤務先でこういった光景を見ると、自分のリスクを考えて、すぐに退職を考えるそうです。自分の身を守ると言う意味では、とても正しい判断なのかもしれません。
医療事務による混合が常態化しているなら…
もしあなたの薬局が医療事務の軟膏混合が常態化しているのであれば、すぐに改善を求めるべきでしょう。スタッフを増員する等の手段をとってもらいましょう。それが難しければ、患者さんに理解を得てもらうしかありません。軟膏の混合で時間がかかるという旨を説明しておけば、大抵の患者さんは理解してくれます。待ちきれない患者さんは他の薬局に行くでしょうから、薬局の売り上げは下がってしまうかもしれません。
しかし、売り上げが下がれば経営者も対策を取ろうと必ず動くので、結果的に状態が改善する可能性が高くなるのではないでしょうか。（この場合、一時の痛みを伴うのは、しょうがないことだと考えるべきだと思います。）
スタッフの増員も、人件費の問題から難しい場合もあるかも知れません。こういった薬局の為に、テクニシャン制度の導入は早い方がいいのかも知れませんね。テクニシャン制度については、こちらの記事をお読みください。
参考記事：テクニシャン制度の導入について
