ガンを扱っている病院での薬剤師の被爆の可能性について:薬剤師転職navi |
昭和56年から死因の第一位の座をずっと保っている悪性新生物(ガン)。
そういった事もあって、現在では人々の間ではガンに対する知識や対策が周知されてきており、
定期的な健康診断を受けて早期治療を目指す等、意識も高くなっています。
薬剤師にもガン専門薬剤師認定制度がありますし、ガン治療に積極的に取り組みたいと思っていらっしゃる薬剤師さんもおられるかも知れません。
ガン治療には薬物治療や放射線治療や移植手術などがありますが、
「ガン治療には興味はあるけれど、ガン治療を行っている病院で働いていたら、抗がん剤で自分が被爆してしまう事があるのではないだろうか?」
今回は、そんなガン治療を行う病院での薬剤師の被爆についての話です。
ご存知の通り、抗がん剤はガン細胞のDNAに傷害を与えたり、細胞分裂を阻止する事でガン細胞を死滅させていくものです。
細胞選択制は高くなっているとはいえ、ガン細胞以外の正常な細胞にもその影響を及ぼしてしまう可能性があります。
ガン治療センターなどでは、抗がん剤の調製をする機会もかなり多くなってきてしまうと思います。
その中で、被爆してしまう可能性、そして被爆しない様にする為にはどうしたらいいのかを考えてみましょう。
まず、抗がん剤による被爆の経路ですが
・薬剤の付いた針を皮膚に刺してしまう。
・薬剤の取りこぼしや飛沫による皮膚・粘膜への付着
・アンプル等から針を抜く時に、揮発した抗がん剤を吸入
・抗がん剤で汚染された飲食による被爆
といったものが挙げられます。
国内での抗がん剤による薬剤師の被爆については報告数がまだまだ少ないらしく、実態は不明な部分が多い様です。
しかし、被爆の知識が少ないまま薬物治療に携わっていたら、いつ被爆する事になってもおかしくないのです。特に女性は、早産・流産など妊娠に関わるリスクや母乳移行による乳児へのリスク等が考えられ、看過できる物ではありません。
被爆の危険性や影響だけ聞くと、抗がん剤の調製がある病院では働きたくないと思われるかも知れませんが、対策をしっかり取っていれば被爆リスクは大幅に下げる事が可能です。
抗がん剤被爆を避ける為に対策として挙げられるものは、
・直接皮膚に付着しないようにする為に、調製時には長袖・手袋・マスク・ゴーグル・キャップを装着する。
・調製の前後では手洗いとうがいを慣行とする。
・廃棄物の処理にも注意する。密閉できる容器で厳重に取り扱う。
・皮膚に付着してしまった場合は、石けんを使いよく洗い流す。状態がおかしければ皮膚科を受診
・眼に入った場合は、水で洗った後に眼科を受診
・抗がん剤をこぼしたら、薬液が広がった周囲から中心に向かって吸水シートやペーパータオルのようなもので拭き取っていく。もちろん、手袋・ゴーグル・マスク・長袖着用など自分の防護も怠らない。拭き取ったものは密閉容器に入れ、厳重管理する。
ガンの画期的な予防法でも見つからない限りは、医療従事者にとってガン治療は切っても切り離せない存在です。
いつあなたの関わっている病院がガン治療へ積極的に乗り出すかも分かりません。
そういった時に、適切な調剤が出来るか出来ないかで大きな差が出てくるのです。
「被爆が嫌だから、抗がん剤調剤はしたくありません。」と言うのは、医療従事者としては問題のある発言と受け取られかねません。
そういった事を言う人は、「何の為に薬剤師になったのか?」と思われてしまうこともあるのではないでしょうか。
ガンを扱っている病院だから被爆するのではなく、抗がん剤調製を適切に行えていないという事が問題ですから、ガン治療を行っている病院へは就職しない方が良いというのは間違いです。
もはや身近なものとなってしまったガンに対して、知識の研鑽は積んでおかないといけないですね。
抗がん剤の被爆に関して、良い情報になるサイトもありますので参考にご覧になってみて下さい。
医療従事者における抗がん剤の職業的暴露について
http://www.iph.pref.osaka.jp/news/vol42/news42_1.html
抗がん剤調製者への被爆調査と閉鎖式調製器具の使用効果に関する研究
http://www.showa-u.ac.jp/sch/pharm/showa_jour_pharm/back_number/frdi8b000000i5nq-att/3-1_Seiji_Abe.pdf
他にも、抗がん剤を販売している製薬会社のサイトでも、調製時の注意や処理の方法などを説明しておられるので、参考にしてみると良いかも知れません。